グローバル化が進む現代のビジネス環境において、多言語対応は欠かせないスキルとなっています。しかし、全ての言語に精通することは難しく、英語や第二外国語として学んだことのある言語はともかく、知らない言語の翻訳にAI翻訳を利用することには不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AI翻訳を効果的に活用し、知らない言語を翻訳する方法を紹介します。
目次
AI自動翻訳の可能性と現代ビジネスでの重要性
AI翻訳は、グローバル化が加速する現代ビジネスにおいて欠かせないツールとなりつつあります。製品マニュアルやWebサイトのローカライズ、海外とのメールのやり取りなど、AI翻訳の活用シーンは多岐にわたります。
さまざまな市場でビジネスを展開していく中で、社内に対応できる人材がいない言語への翻訳が必要になることもあるでしょう。その度に、外部の翻訳会社に依頼することは、コストがかさみ大変です。簡単な文書やメールの翻訳であれば、社内で対応したいと考える企業も多いのではないでしょうか。こうした場合に便利なのが、AI翻訳です。
知らない言語を翻訳する際の難しさ
AI翻訳を活用した、知らない言語の翻訳方法について、日本語からタイ語への翻訳を例に紹介していきます。

画像からわかるように、
- 「犬も歩けば棒に当たる」が「犬は歩くことができる」になっている
- 謎の人物「彼」が突然出てきた
- 「意見がまとまる」が「影響を与える」になっている
など、本来伝えたかった内容からのズレや意味の改変が複数生じてしまっています。
実はこの例文は、敢えてAI翻訳が苦手な要素を盛り込んでいるため、原文と逆翻訳の乖離が大きいのですが、いずれにせよ、このような乖離が生じた際には、逆翻訳された日本語だけを頼りに修正していくのは最善策とは言えません。
このような翻訳の問題を解決するには、日本語から直接タイ語に翻訳するのではなく、英語を「仲介言語」として利用することが効果的です。英語は翻訳データが豊富です。多言語間の翻訳ペアに関しても多くのデータが蓄積されており、知らない言語を翻訳する際に活用できます。
知らない言語を翻訳する6つのステップ
上述したタイ語への翻訳に関して、AI翻訳ツールを使った具体的な翻訳方法をステップ形式で解説していきます。
- AI翻訳が英訳しやすい日本語に修正する
- 作成した日本語をAI翻訳に入力して英訳する
- 英語から逆翻訳した日本語を確認しながら原文の日本語を修正する
- 得られた英語をAI翻訳に入力してタイ語へ翻訳する
- タイ語から逆翻訳した英語を確認しながら原文の英語を修正する
- 英語⇔タイ語が成り立つ事を確認する
ステップ①AI翻訳が英訳しやすい日本語に修正する

まず、原文の日本語をAI翻訳が英訳しやすい形に修正しましょう。具体的には文章をシンプルでわかりやすい表現に変更します。
「犬も歩けば棒に当たる」のようなことわざは、日本語特有の言い回しであり、このまま翻訳しても意図する内容がよく伝わりません。そこで「行動を起こすことで、予期せぬ良い結果をもたらすことがある。」と具体的に言い換え、AI翻訳が正確な英訳を行えるように修正します。
また、1文が短い方が翻訳しやすいため、この例では1つの文を3つの文に分けました。
ステップ②作成した日本語をAI翻訳に入力して英訳する

次は、修正した日本語をAI翻訳に入力し英訳します。ただし、まだ不自然な表現や文法的な誤りが残っている可能性もあるため、この段階ではまだ完璧とは言えません。次のステップで、さらに英文を修正していく必要があります。
ステップ③英語から逆翻訳した日本語を確認しながら原文の日本語を修正する

次に英語から日本語への逆翻訳結果と原文を照らし合わせながら、日本語を修正していきます。もしも、逆翻訳の日本語に違和感を感じたら、ステップ①に戻って日本語を修正し直しましょう。
日本語⇔英語間で、原文と逆翻訳とが同じ意味になるような英文が得られれば、その英文はどんな言語にも正確に訳される確率が高いと言えます。
ステップ④得られた英語をAI翻訳に入力してタイ語へ翻訳する

ステップ③で得られた英語をタイ語に翻訳します。
ステップ⑤タイ語から逆翻訳した英語を確認しながら原文の英語を修正する

タイ語から英語への逆翻訳を確認し、必要に応じて、入力した英語を手直ししましょう
ステップ⑥英語⇔タイ語が成り立つ事を確認する

最後に、ステップ③で日本語⇔英語間で原文と逆翻訳が同じ意味になったことを確認したように、タイ語から英語への逆翻訳を経て得られた英語が、当初の英語と同じ意味になるまで、再度英語を修正し、翻訳と逆翻訳を繰り返します。最終的に訳出されたタイ語の文が、元の日本語からタイ語への正しい翻訳結果といえるでしょう。
このように英語を仲介言語とすることで、知らない言語でも正確かつ自然な翻訳ができるようになります。
まとめ
AI翻訳は、異なる2つの言語の対訳データを大量に読み込ませて学習しています。さまざまな言語の中でも、英語との対訳データはデータ量が多く、結果として日本語⇔英語や、英語⇔他言語の言語ペアは、精度が高くなる傾向にあります。
AI翻訳のこの特性を利用すれば、英語を仲介言語として、知らない言語への翻訳もできるということを今回はご紹介しました。
このような手法を活用し、より多くのビジネスシーンで「言語の壁」を越えたコミュニケーションが展開されることを期待します。