経営・DXに効くAI翻訳

クラウド・AI時代のセキュリティ対策とは? SOC2とISO/IEC 27017で見る、“信頼できるサービス”の条件

2025.08.05

AIやクラウドサービス導入時、その“安全性”、どう判断していますか?

「AIを活用したいけれど、情報漏洩などのセキュリティが心配」 「クラウド型のツールって便利だけど、本当に安全なの?」

DXやAI導入が加速する中、そんな不安を抱く企業が増えています。特に生成AIやAI翻訳といったサービスは、便利な一方で「入力した情報がどこへ行くのか分からない」「社内ルールが追いついていない」といった懸念も根強くあります。

こうした中で注目されているのが、「SOC2」や「ISO/IEC 27017」などのクラウド・AIサービスにおけるセキュリティ認証です。

本記事では、それぞれの認証の特徴や違いを分かりやすく整理し、クラウドやAIサービスを選定する際の判断基準としてセキュリティ認証がどう活用できるのかを解説します。

AIツール利用に潜む3つの代表的リスク

セキュリティ認証について解説する前に、まずはAIツールのリスクについて理解しておきましょう。
AIツールやクラウドサービスを適切に活用することで、業務効率は飛躍的に上がります。しかし同時に、見落とされがちなリスクもあります。実際の現場で起こりうる3つの典型例をご紹介します。

【リスク①】入力した機密情報が、AIの学習に使われる
従業員がリスクを認識しないまま、新製品の企画書や、個人情報を含む顧客リスト、社外秘の議事録などをAIに入力してしまった場合、そのデータがAIの学習データとして利用され、第三者への回答として出力されてしまう可能性があります。

【リスク②】AIサービス自体がサイバー攻撃を受ける
利用するAIサービス提供者のセキュリティ体制が脆弱な場合、そこがサイバー攻撃の標的となり、自社が入力・保存したデータが外部に流出する危険性があります。便利なクラウドサービスだからこそ、その提供元が信頼できるかどうかを見極めることが不可欠です。

【リスク③】知らないうちに法律や契約に違反している
例えば、お客様との契約で「データは国内のサーバで保管する」と定めているにもかかわらず、海外にサーバを置くAIサービスでそのデータを処理してしまった場合、重大な契約違反となります。個人情報保護法やGDPRといった各国の法規制への対応も同様で、企業の信頼を根底から揺るがしかねません。

こうしたリスクを組織として管理・回避するためには、ツールの提供元がどのようなセキュリティ体制を敷いているかを客観的に評価する必要があります。その強力な判断軸となるのが、本記事で解説するセキュリティ認証です。

SOC2とISO/IEC 27017、それぞれ何を評価する認証なのか?

それぞれの認証が、どのような観点でセキュリティを評価しているのかを見ていきましょう。

ISO/IEC27017とは?

ISO/IEC 27017は、クラウドサービスに特化したセキュリティ対策を評価する国際認証です。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC 27001を基盤とし、クラウド特有のリスクに対応するための“拡張仕様”とされています。

この認証を取得するには、まずISO/IEC 27001の要件を満たしている必要があります。その上で、クラウド固有のセキュリティ管理策を追加的に実装することが求められます。したがって、ISO/IEC 27017を取得している企業は、情報セキュリティの基礎とクラウド環境におけるリスク対策の両方をカバーしていると判断できます。

■主な評価ポイント:

仮想環境の管理 仮想マシンや仮想ネットワークなど、クラウド上での資源の隔離や保護が適切に行われ、安全に運用されているかを評価します。
責任分担の明確化 クラウドサービス提供者と利用者の間で、セキュリティやデータ保護の責任範囲が明確に定義・文書化されているかを確認します。
サービスの監視とログ管理 ログの記録・保管・確認のプロセスが整備されており、異常検知やトラブル対応ができる体制が整っているかを評価します。

クラウドサービスを設計・構築するうえで、より実践的かつ具体的な管理水準が求められるため、ISO/IEC 27017は、クラウドベースのサービス導入時において非常に有効な判断材料となります。

SOC2(System and Organization Controls 2)とは?

SOC2は、サービス提供者が顧客のデータを安全かつ適切に取り扱っているかを評価する報告書です。米国公認会計士協会(AICPA)が定めた基準に基づき、外部の公認会計士や監査法人が評価を行います。

特に、一定期間(通常6ヶ月〜1年)にわたって継続的な運用状況を審査する「Type2報告書」は、実効的なセキュリティ管理体制が構築・運用されているかを示す指標として高く評価されています。

■SOC2の5つの評価ポイント:

セキュリティ 不正アクセスや情報漏えい、マルウェアなどのリスクからシステムを守るための対策や管理体制が整っているかを評価します。アクセス制御や認証、監視ログの管理などが対象になります。
可用性 必要なときにサービスが適切に稼働し、利用できる状態が保たれていること。サーバダウンや障害に備えた体制が整っているかどうかを評価します。
処理のインテグリティ データ処理が正確・完全かつ意図したとおりに実行されているかを評価します。誤処理・改ざん・不正な変更がないよう、業務プロセスやシステムに整合性があるかを確認します。
機密保持 機密情報が適切に識別・保護され、認可されていないアクセスや開示が防止されているかを評価します。
プライバシー 収集・保存・利用される個人情報が、関係法令やポリシーに従って適切に管理されているかどうかを評価します。

ISO/IEC27017とSOC2の違いは?両方必要?
~信頼できるサービスを選ぶために~

ここまで、ISO/IEC 27017とSOC2、それぞれの概要を見てきました。では、この2つの認証にはどのような違いがあり、サービス選定の際にどちらを重視すべきなのでしょうか。 ここでは、2つのセキュリティ認証の違いに注目してみていきましょう。

■評価の焦点が異なる、ISO/IEC 27017とSOC2
ISO/IEC 27017は、クラウドサービスの「設計段階」でのセキュリティ体制に注目した国際規格です。たとえば、顧客と提供者の責任分担や仮想環境の分離、ログ管理体制の設計といった、クラウド固有のリスクにどう対応するかという“初期の方針”が評価対象となります。

一方で、SOC2は、設計された体制が「日常の運用において適切に実行されているか」を第三者が検証する制度です。アクセス制御やログ監視、脆弱性対応といった、セキュリティが“継続的に機能しているか”が審査ポイントとなります。

つまり、ISO/IEC 27017で「どう設計されているか」を確認し、SOC2で「その運用が本当に実行されているか」をチェックする、という組み合わせが成立するのです。

ISO/IEC 27017 SOC2
評価の焦点 クラウドサービスにおけるセキュリティ設計・責任分担・データ管理の適切性 サービス運用におけるセキュリティ体制の実効性
認証策定団体 国際標準化機構(ISO) 米国公認会計士協会(AICPA)
審査者 ISO認定審査機関の審査員 外部の公認会計士または監査法人
対象範囲 クラウド特有の設計リスク(責任分担、仮想環境、ログ管理 など) セキュリティ、可用性、インテグリティ、機密保持、プライバシーの運用状況
目的 クラウド環境に特化したベストプラクティスの設計・明文化 継続的な安全運用が実行されているかどうかの証明

■どちらを重視すべきか?両方必要か?
各社のセキュリティポリシーに応じて、重視すべき認証は異なります。
たとえば、クラウド設計段階でのセキュリティ対策を評価基準としている場合はISO/IEC 27017が、運用体制の実効性や継続的な管理を重視している場合はSOC2が有効な判断材料になります。
特に、機密情報を扱う業務や厳格なポリシーを持つ組織にとっては、両方の認証を取得しているサービスは“設計と運用の両面で信頼できる”選択肢となるでしょう。

みらい翻訳の実例で見るセキュリティ対策とセキュリティ認証

これまで見てきた通り、SOC2やISO/IEC 27017などの第三者認証は、クラウド・AIサービスを選定するうえで必要なセキュリティ要件が備わっているかを見極める、客観的な指標となります。まずは、導入候補のサービスがこれらの認証を取得しているか、自社のセキュリティポリシーと合っているかを確認することが、サービス選定の第一歩です。

さらに、「どのようなセキュリティ対策が、どの認証のどの要件と関係しているのか」まで理解することで、DX担当者には次のような実質的メリットがあります。

  • セキュリティ対策の“実効性”を評価できる
    単なる認証取得の有無ではなく、「どのような具体的管理策(例:アクセス制御、暗号化、ログ管理など)が整備され、それがどの認証基準に対応しているか」を把握することで、自社ポリシーとの整合性を構造的に判断できます。

  • 社内提案・経営層への説明がしやすくなる
    「ISO/IEC 27017は設計面で、SOC2は運用面でこういう管理策が備わっている」といった形式で整理すれば、IT戦略や投資提案の内容に説得力が増し、社内やステークホルダーへの説明責任を果たしやすくなります。

  • チェックリストやRFP作成の精度が高まる
    ベンダー選定時に、「認証を取得しているか」に加えて「どの認証でどの項目に対応しているか」を明確に問う設計ができるため、リスクを可視化した上で評価基準を設定できるようになります。

このように、認証取得の有無にとどまらず、その裏付けとして具体的なセキュリティ体制の中身を理解することが、DX担当者にとって“選定力”や“説明力”を格段に上げる要素となります。

続く表では、実際にみらい翻訳が提供する具体的なセキュリティ要項と、ISO/IEC 27017/SOC2との対応関係を整理しています。ご参考になさってください。

みらい翻訳のセキュリティ要項 ISO/IEC27017関連する評価項目 SOC2関連する評価項目
SSL/TLS1.3による通信の暗号化 通信の暗号化(クラウドサービス提供者と顧客間のセキュリティ) セキュリティ、機密保持、プライバシー
ID/パスワード認証、IPアドレス認証機能、2段階認証機能 アクセス制御(サービス利用者と提供者の責任分担) セキュリティ
国内サーバでの管理。データの一時保存→削除。暗号化保存。 データの保存・削除に関する管理策、データ所在地・保管場所 機密保持、プライバシー
データ二次利用なし クラウドサービス提供者によるデータ利用の制限 機密保持、プライバシー
脆弱性試験を定期的に実施 脆弱性管理(セキュリティ更新・パッチ適用) セキュリティ
管理者を制限 権限管理。サービス利用者と提供者の責任分担 セキュリティ、機密保持
法務省要件やGDPRにも対応 個人データ保護に関する法令順守 プライバシー

おわりに:信頼できるクラウド・AIサービスを選ぶために

クラウドベースのAIや翻訳ツールなどを検討する際、「どれくらい安全か?」は判断の難しいポイントのひとつです。
そんなとき、SOC2やISO/IEC 27017といった第三者認証は、 “客観的な信頼性の証拠” として活用できます。

みらい翻訳は、この両方の基準を満たすことで、企業の皆様が安心して使えるサービス環境を整備しています(※SOC2は2025年11月ごろ取得見込み)。AIを業務に活用する際のセキュリティリスクに不安がある方は、ぜひ一度みらい翻訳の取り組みもご覧ください。