グローバル化が進んだ昨今、急に仕事で英語が必要になることは珍しくありません。そんな時、英語があまり得意でないビジネスパーソンは、どのように対応すればいいかと不安になることもあるでしょう。
AI自動翻訳を活用すれば、たとえ英語に自信がなくても、チャットやメールといったテキストベースのコミュニケーションがスムーズに行えるようになります。
とはいえ、AI自動翻訳で思ったような結果が得られなかったという人もいるのではないでしょうか。
実は、AI自動翻訳を使いこなし、伝えたいことがしっかり伝わる翻訳結果を得るためには、ちょっとしたコツがあるのです。本記事では、AI自動翻訳の逆翻訳機能の活用法と、日本語入力における4つのポイントを紹介します。
目次
突然の英語対応の強い味方・AI自動翻訳の活用方法とは
グローバル化が進む現代のビジネス環境において、突然英語でのコミュニケーションが必要になる場面が増えています。
- 取引先に海外企業が加わり、英語でのメールのやり取りが必要になった
- ECサイトの海外展開に伴い、海外からの問い合わせに対応しなければならなくなった
- チームに海外の方が加わり、英語でのコミュニケーションが必要になった
- 海外支社の立ち上げに関わることになり、現地スタッフとの連絡が必要になった
- 海外拠点で起きた技術的トラブルの遠隔サポートを任された
しかし「学生時代に英語を学んだものの、実際に使う機会が少なかった」「突然英語が必要になったけど、英語力に自信がない」と不安になる方もいるのではないでしょうか。英語力を向上させることも大切ですが、急を要する状況では即効性のある解決策が必要です。
そこでおすすめなのが「AI自動翻訳」です。最新のニューラル機械翻訳(NMT)技術を活用したAI自動翻訳ツールを使えば、メールやチャットに必要な英文を簡単に作成でき、コミュニケーションを円滑に行うことができます。
以下で、AI自動翻訳の活用方法を紹介していきます。
翻訳結果が合っているか不安?「逆翻訳」で解決
AI自動翻訳は、翻訳したい原文を入力することで、瞬時に訳文を作成するツールです。しかし、翻訳先の言語が得意でない場合、翻訳結果だけを見ても、自分の伝えたいことが伝わる翻訳文になっているのか、不安を感じることもあるでしょう。そんな時に役立つのが「逆翻訳」機能です。
逆翻訳機能とは、翻訳後の文を再度、元の言語に変換しなおす機能のことです。
逆翻訳を活用すれば、翻訳文を読んで意味や正しさがわからないとしても、逆翻訳の結果を確認することで、表現したい内容に訳出されているかどうかを判断できます。
例えば、日本語から英語に翻訳する場合、逆翻訳された日本語が元の日本語とほぼ同じ意味であれば、英語の翻訳も正確であると確認できます。
この方法によって、英語初心者でも翻訳の正確性をチェックできます。そして、自分の意図が相手に正確に伝わる英文を作成することができるでしょう。
みらい翻訳の「Mirai Translator®」や「みらい翻訳Plus」には、この逆翻訳機能が搭載されています。さらに、原文・翻訳文・逆翻訳文をひとつの画面内で同時に閲覧することができるため比較しやすいという特徴があります。
「Mirai Translator®」を活用したビジネスメールの作成例を紹介します。

この例では、会議の日時、場所、議題、参加の依頼などの情報が含まれたビジネスメールを翻訳しています。
入力した元の文章と逆翻訳された文章を見比べてみましょう。意味が違うところを挙げるならば、1カ所。元の文では「資料等、必要でしたらお知らせください。」とあるところが、逆翻訳だと「資料が必要な場合はお知らせください。」になっています。この程度の違いなら、意味が近いので問題ないと判断しても良いのではないでしょうか。
このように、逆翻訳の結果が、最初に入力した日本語の文章とほぼ同じ意味であることから、英語が適切に翻訳されていることがわかります。逆翻訳機能を活用すれば、日本語ベースで翻訳結果の正確性を判断することができるのです。
AI自動翻訳を使用することで、ネイティブレベルの英語を誰もが扱えるようになります。これは、ビジネスシーンでの実用レベルに十分達しているといえるでしょう。
なお、逆翻訳機能の活用だけでもかなりの精度を担保できますが、意図と違う翻訳や誤訳をできるだけ減らし、100%に近づけるためには追加のテクニックが必要です。次の章では、翻訳精度をさらに高めるための具体的なポイントを紹介していきます。
AI自動翻訳を活用して100%の精度に近い英語を作るポイント
それでは、AI自動翻訳を活用して100%の精度に近い英語を作るポイントについて、英語翻訳の失敗例を踏まえて解説していきます。
よくある英語翻訳の失敗例

例では、「猿も木から落ちる、失敗は成功の元、過ちを学び改善策を講じ、革新的なビジネスモデルへ転換します。」という日本語文を AI自動翻訳で英訳・逆翻訳しています。


英語の翻訳文から逆翻訳した結果は「猿が木から落ちても、失敗は成功の源であり、間違いを学び、改善策を講じ、革新的なビジネスモデルに転換する。」です。

上記の画像からわかるように、
- ことわざが文字通りの文章として訳され、ことわざになっていない。
- 2つのことわざの接続部分がおかしい。
- 主語が「猿」なのか誰なのかよくわからない。
など、本来の意味が伝わりにくい訳文となりました。ことわざや慣用句など日本語特有の言い回しは直訳になってしまい、原文の意図が完全には伝わらないケースが多いです。
日本語は文脈から主語を推測する文化のためしばしば主語が省略されますが、英語では常に主語が必要です。そのため、日本語では意味が通じても、英語に置き換えた際に、誰がその行動の主体なのかわからなかったり、命令文になってしまったりすることがあります。実は、上の例の翻訳文も内容が曖昧で、命令文とも取れるような英語になってしまっています。
こういった問題を避けるにはどうしたらいいでしょうか?次の章で、翻訳精度を高める4つのポイントを見ていきましょう。
翻訳精度を高める4つのポイント
AI自動翻訳の精度を高めるには、入力する段階で、わかりやすい文であることが重要です。以下の4つのポイントを意識して日本語の文を作成することで、より正確な翻訳結果を得ることができます。
- 文は短くする
- 主語を明確にする
- 専門用語や独特な表現は避ける
- 慣用句やことわざを使わない
まず、1つの文を短くします。複雑な構造を避け、シンプルな文で表現しましょう。次に、日本語で省きがちな主語を必ず明記します。
さらに、専門用語や独特な表現を避け、誰が読んでも理解できるように、言葉遣いも意識しましょう。意味が通じづらい慣用句やことわざを使わないことも、翻訳精度を高める上で必要なステップです。
これらのポイントは、最初の日本語入力時だけでなく、逆翻訳結果に違和感を覚えた場合の見直しにも活用できます。次の章では、これらのポイントを踏まえた具体的な改善例を見ていきましょう。
失敗例を4つのポイントに沿って修正する
それでは、先程紹介した失敗例を4つのポイントに沿って修正していきます。

長い文は複雑な構造になりがちで、翻訳精度が落ちる原因の一つです。
上記の画像では、「猿も木から落ちる、失敗は成功の元、過ちを学び改善策を講じ、革新的なビジネスモデルへ転換します。」という文を、「猿も木から落ちる。失敗は成功の元。過ちを学び改善策を講じます。革新的なビジネスモデルへ転換します。」と短く区切っています。
一つの長い文章を複数の短い文に分割し、AI自動翻訳がより正確に内容を解析できるようにします。

さらに、翻訳の精度を高めるために、それぞれの文で主語を明確にすること、また、専門用語やことわざは避けることが重要です。
「猿も木から落ちる。失敗は成功の元。過ちを学び改善策を講じます。革新的なビジネスモデルへ転換します。」という文には2つのことわざが含まれています。これを、「時には誰もがミスを犯します。私たちは失敗から問題を学びます。私たちは問題を改善します。そして、私たちは現状のビジネスモデルを新しいものへと変革します。」と書き換えています。
ことわざや慣用句を翻訳する場合は、伝えたい意図を整理し、具体的に別の言葉に置き換えることがポイントです。
修正後の英語文章
実際に修正後の英語の文章を見てみましょう。

修正後の英語文章では、元の抽象的な表現が具体的かつ明確な文章に変わっています。「Sometimes, everyone makes mistakes.」から始まり、失敗から学び、問題を改善し、ビジネスモデルを新しいものに変革するという文が順序立てて説明されています。最初の翻訳例にあった、命令形に見える部分も無くなりました。
逆翻訳された日本語を見ると、意図がほぼ正確に反映されており、大きなずれは見られません。翻訳文がちゃんと伝えたい内容になっていると判断できるでしょう。
英語初心者でも、チャットやメールでのコミュニケーションは問題なくできる
今回紹介したポイントをおさらいしましょう。
まずは、翻訳したい日本語の文を作成する上で、次の4つのポイントに気を付けましょう。
- 文は短くする
- 主語を明確にする
- 専門用語や独特な表現は避ける
- 慣用句やことわざを使わない
次に、AI自動翻訳に日本語の文を入力したら、逆翻訳の結果を見て、意図通りに翻訳されているか、伝えたい内容がきちんと伝わる文になっているかを確認しましょう。
AI自動翻訳を上手に活用すれば英語初心者でも、自信を持って、チャットやメールでのコミュニケーションが取れるようになります。
次回は、社内プレゼン資料や契約書など、より高度な英語文書の作成に焦点を当て、英語中上級者向けのAI自動翻訳活用法を紹介します。

西山教授の著書『理工系のAI作成術』
西山聖久教授の著書『理工系のAI英作文術 誰でも簡単に正確な英文が書ける』では、AI自動翻訳を活用した効果的な英文作成方法について解説しています。
「理工系」とタイトルにありますが、英文による資料やメールの作成など、文系やビジネスパーソンにも有益な内容です。AI時代の英語コミュニケーション能力を磨きたい方、効率的に正確な英文を作成したい方はぜひ手に取ってみてください。