TOEIC 700-800点台の中上級レベルの英語力を持つビジネスパーソンは、重要な商談のプレゼン資料や報告書、海外パートナーとの契約書など英語の資料や文書の作成を任されることも多いでしょう。ビジネスで扱う文書には高い正確性と読みやすさが求められます。これらの文書は時に、ビジネスの成否に直結する重要な役割を果たす可能性があり、作成には文書に対する責任が伴います。
特に、海外取引率が50%を超えるような企業では、こうした業務の重要性やボリュームが年々増しており、AI自動翻訳などのツールを活用して、効率的かつ正確にビジネス文書を作成することが求められます。
今回は前編・後編に分けて、TOEIC 700-800点台のビジネスパーソンが、読みやすく正確な英文を効率的に作成するためのノウハウや手順を紹介します。
前編では、日本語と英語の文の違いに焦点を当て、「読みやすい英文とは何か」、そして質の高い英文を作成するための「3C」の考え方を解説します。後編ではさらに、「3C」を踏まえた上で、AI自動翻訳を活用して読みやすい英文を効率的に作成するための方法を具体的に解説します。
目次
プレゼン資料や契約書などの英文は読みやすさが重要
海外取引が日常的に行われている企業では、プレゼン資料や契約書などの文書を英語で作成する機会が多くあります。これらの文書は、会社の方針や取引条件を明確に伝える重要な役割を担っており、正確かつ読みやすい文章で書かれることが求められます。
逆に、これらの資料の内容が不明瞭だったり、誤解を招くような表現があったりすると、ビジネスチャンスを逃すだけでなく、後々のトラブルに発展するリスクもあるため、注意が必要です。
ビジネスで通用する読みやすい文章を作成するためには、まず「読みやすい文章とはどのようなものか」、そして逆に「読みづらい文章とはどのようなものか」を理解することが重要です。それを踏まえて初めて、効果的で的確なビジネス文書が作成できるようになります。
読みづらい文章は、主張がわかりづらく冗長
それではまず、以下の英文を例に読みづらい文章の特徴を見ていきましょう。日本語で書かれた文章をそのままAI自動翻訳にかけた場合、以下のような読みづらい英文が生成されることがあります。
Our company has been improving its reputation in the industry through steady efforts, but we are not complacent and are pushing forward to make further strides. For our company, the key to growth is not to be afraid of change and to face challenges even when we strike a stone bridge, and the path of the snake is to deal with inherent problems in an appropriate way, as the word snake implies, and we believe that attitude is important. And even in the face of adversity, our company believes that by working together as one, we can overcome the checkered path. We will continue to strive to meet the changing times and provide services that exceed our customers’ expectations. |
この文章が読みづらい理由として、以下の4つの理由が挙げられます。
- 接続詞(and、butなど)が多用されており、一文が長い
- 遠回しな表現や受動態が多い
- 「Our company」「we」「the key to growth」など主語が頻繁に変わっており、誰が何を主張しているのかがわかりにくい
- 慣用句やことわざが直訳され(例:strike a stone bridge←石橋を叩く)、意味が伝わりにくい
このような文章では、読み手によってさまざまな解釈をしてしまうリスクが高まります。結論や主張が明確でないために、読み手が筆者の意図を正確に理解するのが難しくなるのです。
読みやすい文章は、明確で簡潔
次の英文は、上記の読みづらい例文と同じ内容を表現していますが、読みやすさに配慮されています。
In the future, we will provide services that please our responding to the changing times. Towards this goal, we have built up our reputation in the industry. However, we are not satisfied with the status quo and aiming for further growth. Growth requires the ability to challenge changes without fear and continuously evolve. Our strength is our ability to overcome difficult situations by working together. While maintaining these ideas, we will do our best to provide services that meet our customers’ expectations. |
この英文が読みやすい理由としては、以下が挙げられます。
- 一文が短く、一文一義で書かれている
- 主語が明確である
- 能動態が多く、具体的で直接的な表現が使われている
- 日本独自の慣用句やことわざなど、伝わりにくい表現が避けられている
日本語と英語の言語構造の違いが読みづらい英文の原因になることがある
ここまで、2つの例文を通じて読みやすい文と読みづらい文の特徴を見てきました。
さて、読みづらい英文が生まれる原因の一つに、日本語と英語の言語構造の違いがあります。例えば、日本語では文脈により主語を省略することができますが、英語では明確な主語が必要です。また、日本語は受動態を多用し、遠回しな表現や婉曲表現を好む傾向があります。さらに、日本語と英語の文では段落の意味や構成も異なります。
今回の読みづらい英文の例も、日本語で作成した文章をそのままAI自動翻訳にかけた結果、英文としては読みづらさが生じています。このような日本語と英語の違いを頭に置いておくことも、読みやすい英文を書くために重要なのです。
ちなみに英語が得意でない人に向けた初級編の記事では、日本語から英語に翻訳する際の日本語入力における基礎的なポイントについてまとめています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
読みやすい英文に重要な「3C」とは
ここからは、読みやすい英文を書くために意識すべき「3C」という考え方について深掘りしてみましょう。
「3C」は、もともとテクニカルライティングの分野で生まれた概念です。テクニカルライティングとは、技術的な内容をわかりやすく正確に伝えるための文章作成手法です。主にマニュアルや仕様書、技術文書の作成に用いられる考え方ですが、ビジネスライティングにおいても非常に有効です。「3C」の考え方は、読みやすく、明確で誤解を招かない文書を作成するための基本原則として、正確で効果的な英文作成の指針となります。
「3C」とは、以下の3つの要素で構成されています。
- Correct:正確
- Clear:明確・明瞭
- Concise:簡潔・簡明
英文を作成する際にこの3つの「C」を意識することで、誰にとっても読みやすく、解釈のズレが生じづらい文章を作ることができます。以下ではそれぞれのポイントを見ていきましょう。
Correct(正確)な英文を書くポイント
正確な文章を書くためには、単語のスペルミスや文法ミスを避け、適切な語彙を使用することが重要です。さらにTOEIC860点以上の上級者になると、文脈に適した単語を選ぶスキルも求められるでしょう。
AI自動翻訳を利用することで、文脈に合った正しい単語や表現を確認することができます。上手に活用しましょう。
Clear(明確)な英文を書くポイント
読者に誤解を与えない明確な英文を書くためには、主語をはっきりさせる、冠詞(定冠詞/不定冠詞)や名詞(単数形/複数形)を意識して使い分ける、慣用句や婉曲表現の使用を避けるなどのポイントがあります。簡潔で具体的な表現を心がけること、誰が何を主張しているかが明らかであることが重要です。
冠詞・名詞の使い分けについては、後編で詳しく解説をします。
Concise(簡潔)な英文を書くポイント
簡潔な英文を書くためには、できるだけ少ない語数で意味を伝える工夫が必要です。シンプルな文型(SVO、SVC、SVなど)や能動態の使用を心がけ、冗長な表現を避けることが大切です。また、受験英語でおなじみの「It … that …」や「There is/are」のような構文や仮定法などは、原則的に避けましょう。使用する場合は、どうしてもその表現を使う必要があるなど、意図をもって使うようにします。
まとめ
ビジネス文書では、誰にとっても同じように理解できる「読みやすい英文」を作成することが重要です。日本語をそのまま英語に訳してしまうと、長文や受動的な表現、婉曲表現が増え、伝わりにくい文章になってしまうことがお分かりいただけたと思います。
読みやすい英文を作成するためには、「3つのC(Correct、Clear、Concise)」を意識し、適切な語彙を選び、シンプルで直接的な表現を心がけることが重要です。
「後編」では「3C」をベースに、AI自動翻訳を活用して効率的に「読みやすい英文」を作成するための具体的なポイントや手順を、例文を使って解説します。

西山教授の著書『理工系のAI英作文術』
西山聖久教授の著書「理工系のAI英作文術 誰でも簡単に正確な英文が書ける」では、今回解説した「3C」だけでなく、AI自動翻訳を使って英文を作成するためのコツが詳しく紹介されています。
「理工系」とタイトルにありますが、英文による資料やメールの作成など、文系やビジネスパーソンにも役立つ内容となっています。