株式会社松尾製作所 AI自動翻訳の導入 工場社員の半数が外国籍。製造品質と社員の安全を守るべく『FLaT』を導入、翻訳業務効率が10倍に

株式会社松尾製作所は、1948年の創業以来、常に技術革新を追求しながら先端産業を支える精密機械加工のパイオニアです。愛知県を拠点に精密線ばね品など自動車・家電製品用精密部品を製造、金属加工部品と樹脂成形品を自動ラインで一貫生産する製品は、自動車の電装や制御に幅広く使用されています。また、アメリカやベトナム、中国、インドネシアにも現地生産拠点を設けています。マスコットキャラクター「マツオちゃん」が、同社の魅力を積極的に発信していることでも知られています。

同社では、2023年12月より『FLaT』の利用を開始。本記事では、総務人事部 情報システム課 課長 安藤 大輔様、同課 DX推進係 係長 大橋 隆貴様、同課 DX推進係 鐘撞 匡様、第1製造部 阿久比工場 管理班 村瀬 峰樹様、同班 村瀬 香奈実様に、採用の理由と活用状況を伺いました。

株式会社松尾製作所

1948年の創業以来、聖書の言葉「人生には、満足の境地はない。」を経営理念としてP・B・Pを追求、知恵を集結し努力を傾けてきました。P・B・Pとは、Possibility(可能性)、Betterment(改善)、Progress(進歩)を意味します。そこには、働く人に対する人間愛と地域の方々との協調、常に新製品・新技術のイノベーションへの積極的な取り組みがあり、顧客満足へのあくなき挑戦があります。主に自動車電子制御・精密応用機器用の製品をこだわりの生産設備で合理的に生産、同社の製品は顧客から高い評価を受けています。

ご担当者様 
総務人事部 情報システム課 課長 安藤 大輔(あんどう・だいすけ)様
総務人事部 情報システム課 DX推進係 係長 大橋 隆貴(おおはし・たかき)様
総務人事部 情報システム課 DX推進係 鐘撞 匡(かねつき・まさし)様
第1製造部 阿久比工場 管理班 村瀬 峰樹(むらせ・みねき)様
第1製造部 阿久比工場 管理班 村瀬 香奈実(むらせ・かなみ)様

出発点と選択の理由:トライアル時点で約1,000時間の業務量削減。効率向上効果10倍を体感して全社導入を決断

ー 皆さまの業務内容をお聞かせください。

安藤:総務人事部 情報システム課 課長として、基幹系、情報系、セキュリティ、ネットワークなどシステム全般を管掌しています。

大橋:私は情報システム課の中でもDX推進係として、社内の業務効率向上を担っています。『FLaT』も今回、DXの一環として導入しました。

鐘撞:DX推進係の中で、「ラクして快適テクニック」など、社内のITスキルやリテラシーを高める活動を展開しています。

村瀬(峰):私は製造畑が長く、現在は阿久比工場で製造支援を担っており、業務管理や作業指導を行っています。

村瀬(香):村瀬(峰)の依頼を受け、現場への指示を工場内のモニターへ展開するなど、現場コミュニケーションを活発化させる取り組みを行っています。


公式マスコットキャラクター『マツオちゃん』は、電子の海から生まれた妖精の女の子。製造業の枠にとらわれないユニークでクリエイティブな社風がうかがえる

ー 『FLaT』の導入以前、貴社では翻訳業務をどのように行われていましたか。

村瀬(峰):私のいる阿久比工場は約20年前に新設されましたが、人材確保が難しくなる中、外国籍社員の採用を開始し、現在この工場では200名の工場スタッフの内、半数の約100名がブラジル国籍、ベトナム国籍です。東浦工場など他の工場ではこれほどでもないのですが、やはり数割の社員は外国籍です。

村瀬(香):製造に当たっては、製品ごとにA4にして平均30枚程度の作業要領書を始め、ポイント書、条件表、チェックシートなどを作成しますが、これらを無料の翻訳ツールを使って単語ベースで訳すというのが出発点でした。その時点で翻訳文書は2,000枚累積しており、まったく間に合いません。1人1日1枚がやっとでした。それも無料のツールでは専門用語の翻訳精度が低く、苦労していました。

村瀬(峰):一方、当工場には、業務に精通したのち日本語能力試験N1を取得した社員、ブラジル国籍の者2名、ベトナム国籍の者1名が通訳業務を担っています。現場作業では日本人社員が身振り手振りで伝えつつ、伝わっていないと思ったら、彼らに通訳してもらっていました。彼らにも一番重要な作業要領書の翻訳に加わってほしかったのですが、通訳は、近隣の工場からも呼ばれるほど多忙であるため、なかなか従事できませんでした。

何がもどかしかったかというと、ニュアンスが伝わらないことです。ゆっくり、やさしく、など作業のポイントを伝えきれないことを課題に感じていました。また、彼らは「わかった?」「できる?」と尋ねると、わかっていなくても、「わかった」「できる」と答えます。そう言わないと雇用上不利になると思うからです。彼らの作業上の安全を守るためにも正確かつ迅速な翻訳が必要でした。

ー そうした中でみらい翻訳を知っていただきました。

大橋:DX推進係で、DXを進めるのにどのようなツールが適しているかを議論する中で、即効性が期待できることからAI翻訳に着目しました。7~8製品候補に挙げましたが、全社レベルで顔が利き、翻訳の必要性を痛感している村瀬(峰)さんが「使えそうだ」と言ったのが、みらい翻訳でした。

村瀬(峰):魅力を感じたのはファイル翻訳です。これなら作業要領書をそのまま投入できると思いました。専門用語も精度高く訳せていました。

大橋:そこで、阿久比工場、プレス課、樹脂課でトライアルに入りました。これらの部署には通訳が存在しており、翻訳精度がチェックできるからです。トライアルの結果、 800〜1,000時間程度の作業時間削減を確認でき、「使い続けたい」という声が寄せられました。

村瀬(香):作業要領書は1人1日10枚翻訳を完了できました。村瀬(峰)さんと合わせて20枚、業務効率向上効果にして10倍です。ファイルを投入すると10分ぐらいで訳出される機能にはほんとうに驚きました。


ファイル翻訳はPDFやPowerPoint、Word、Excelなどの装飾やレイアウトも原文通り翻訳可能

大橋:そこで全社利用を視野に入れ、『FLaT』の検討を開始しました。他のツールも検討しましたが、翻訳精度の高さとスピード、コストパフォーマンスで比較できるものはなく、セキュリティ的にも安心できたため、DX推進係として「これで行こう」と決断しました。

安藤:稟議プロセスもスムーズに進みました。業務効率向上を目的としたツールには、せっかく導入したのに後に使われなくなるものがあり、情報システム課としては慎重な見極めが必要です。しかし、『FLaT』は全社で使われる確信があったため、自信を持って上申しました。

大橋:当社の場合、ほとんどは前年度に予算を確保して翌年度に導入するプロセスを踏みます。しかし、『FLaT』は予算を取らずに申請を上げ、2023年12月にはもう導入できたという非常に珍しいケースでした。

松尾製作所流の活用術:作業要領書、安全教育教材をファイル翻訳で多言語展開、全社セミナーでTipsを紹介。クリエイティブな施策で社内浸透も加速化

ー どのようにご活用いただいていますか。

村瀬(峰):先に触れたように、阿久比工場では作業要領書など製造に必要な文書の翻訳に利用しています。正確に訳出するには、作業要領書の日本語を精査する必要があるということがわかってきて、最近はどう翻訳されるかを考えて原文を作るようになりました。

村瀬(香):モニターが工場内に8台あり、注意喚起、至急製造品、来客など、全員で共有したい情報をそこで映し出しています。今は『FLaT』でさっと翻訳して、ちょうど空港のフライト案内板のようなイメージで、ポルトガル語とベトナム語でかわるがわる表示しています。翻訳業務に余裕が生まれたため、モニターを工場内コミュニケーション活性化にも利用しようと、たとえば「各国のお正月」といったテーマで、それぞれの国の文化を紹介したりもしています。

村瀬(峰):また、工場スタッフ向けの労働安全衛生法に基づく資格取得、たとえばクレーン操作やフォークリフトの運転などがその例ですが、そのための教育教材の翻訳にも有効利用しています。14教科各150ページほどの厚さの教材を、英語、中国語(簡)、ベトナム語、ポルトガル語、インドネシア語、スペイン語の6言語で展開、1言語当たり2日のスピードで訳せました。社内でテストも行っており、その問題も彼らの母国語で出題します。そのため、どんどん合格者が誕生しています。今までは、外国籍の社員に資格を取ってもらうのは半ばあきらめており、作業の割り振りに不自由が生じていましたが、それが解消されました。


『FLaT』は20言語に対応:英語・中国語(簡体字/繁体字)、韓国語、アラビア語、イタリア語、インドネシア語、オランダ語、スペイン語、タイ語、ドイツ語、トルコ語、ノルウェー語、ハンガリー語(マジャール語)、フランス語、ベトナム語、ヘブライ語、ポーランド語、ポルトガル語、ミャンマー語、ロシア語

鐘撞:全社利用の促進という観点では、「ラクして快適テクニック」活動の中で『FLaT』の機能を紹介しています。これは、私がヘルプデスク業務に携わる中で、意外にPCの機能は知られていないという気づきから、簡単でありながら効果の高いtipsを紹介しているものです。そこでファイル翻訳や、訳出された内容が意図どおりか確認できる逆翻訳の機能を伝えると、「私も使いたい」と大きな反響が返ってきます。

安藤:私も日常業務で利用しています。ベトナムの担当者とメールでやりとりしているのですが、彼が日本語とベトナム語の2言語で送ってくれるようになりました。「これは負けられん」と私も対抗、今では2言語表記が当たり前になりました。

大橋:海外出向者も便利に使っているようです。生産設備が日本製とは限らず、取扱説明書がいろいろな言語で記述されています。正確に機能を把握するのに『FLaT』が役立っています。全社の利用者数は140名までに増えました。マニュアルは作成しましたが、使い方は見たらわかるため、こちらで詳しく説明しなくてもいいのが助かっています。

導入効果と今後の展望:コミュニケーション活発化で工場に一体感、製造実務でも業務効率向上が実現

ー 『FLaT』を利用する価値をどのような点に見出していただいていますか。

大橋:『FLaT』を利用する価値は明確にあります。大きくは2点で、精度の高い翻訳をしたいときとファイルを丸ごと翻訳したいときです。まず、前者についてですが、取引先とのコミュニケーションにおいては、認識のずれが起きないよう細心の注意を払わなければなりません。このサービスなら、翻訳したあと逆翻訳機能で確認できるため、安心して提出できます。後者については、現場で利用する重要な文書を、ファイル丸ごと一括、それも多言語で作成できる点が非常に有用です。村瀬(香)さんも言及しましたが、業務効率向上効果は10倍になりました。当社は生成AIも利用していますが、上記2点に関しては翻訳に特化した『FLaT』の方が優れていると考えています。

村瀬(峰):阿久比工場は、本当にコミュニケーションが活発化しました。従来は、日本人社員と外国籍社員の間に少し見えない溝がありました。モニターの前を通っても見向きもしてくれなかったのが、今は足を止めて見てくれますし、業務改善提案を募ると、「どうしたら応募できるか」と尋ねてくれるようになりました。一体感が高まってきたと思います。外国籍社員の管理職も誕生しています。

また、労働安全衛生法に基づく資格取得者が増えたことで、スタッフの割り振りの柔軟性が高まりました。製造実務でも業務効率向上が実現しています。外国籍の社員にとっても、資格を取ったことで作業する上での精神的安心感が高まったと思います。

ー 今後の展望をお聞かせください。

大橋:当社での展開においては、率先して利用し、「こういう風に使える」と具体的な活用例を示せる村瀬(峰)さんの存在は大きく、今後も『FLaT』ユーザーはどんどん増えていくと見ています。将来的には、ぜひ会話の翻訳機能を期待したいですね。こちらは日本語で話しても相手の言語で伝わり、相手の言語がこちらに日本語で伝わるようになったら、もう言うことはないので、みらい翻訳には引き続き力を発揮し続けてもらいたいと思います。

組織向けAI翻訳ソリューション FLaT