三菱商事株式会社 AI自動翻訳の導入事例 バイリンガル集団が、翻訳ツールで月間1,000万語を翻訳し続ける理由

貿易を祖業として社会のニーズに柔軟に対応しながら、発展を続けてきた大手総合商社の三菱商事株式会社。現在は、デジタル技術の進化や世界的な低・脱炭素の流れを牽引すべく、さまざまな新しい挑戦を始めています。同社では2019年4月より、『Mirai Translator®』を業務生産性向上のためのツールとして全社で導入いただいています。本記事では、三菱商事株式会社ITサービス部 河原 義徳氏、同 山崎 由加里氏に、採用の理由と活用状況を伺いました。

三菱商事株式会社

三菱グループの一翼を担う大手総合商社 三菱商事株式会社。創業以来の企業理念は「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」から成る三綱領。貿易を祖業とし、世界約90の国・地域に広がる拠点と約1,700の連結事業会社と協働しながらビジネスを展開しています。
天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループ体制で、幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も担っています。

ご担当者様 
ITサービス部 河原 義徳(かわはら・よしのり)様
ITサービス部 山崎 由加里(やまざき・ゆかり)様

出発点:新技術で業務生産性を向上するという発想から機械翻訳に着目

山崎氏
山崎氏

ー はじめに、ITサービス部の業務内容を教えてください。

山崎: ITインフラの整備やシステム開発はもちろんのこと、既存事業のデジタル化の推進もミッションの1つです。また三菱商事グループや海外現地法人のへのサポートも一部行っています。

ー 総合商社である御社においては、ビジネスと翻訳業務の結びつきが深いと想像しますが、何か課題があったのでしょうか?

山崎:特に課題があったわけではありません。当社では英語の運用能力が必要条件で、バイリンガルやトリリンガルという社員も多くいます。日常的に発生する海外とのやりとりで言語が問題になることは少ないのですが、必要に応じて公的な文書の翻訳を専門の翻訳会社に委託するケースもあります。

河原氏
河原氏

河原:今回の話は、新技術を活用しようという発想から始まりました。2016年、新技術を用いた多くの製品が市場に出始める中で、当社もそれを活用して日常業務の生産性向上を図ろうという方針が打ち出され、数ある内の1つが機械翻訳でした。英語、最近は中国語もよく利用しますが、それらが日本語のような母語レベルでないのなら、ツールを活用して効率を上げる、人と文書を共有するために翻訳にかかる時間を短縮する、というのは望ましいあり方なのではないかということで検討に入りました。

選択の理由:『Mirai Translator®』の英訳精度、ファイル翻訳機能、堅牢なセキュリティを評価

ー 具体的にどのようにサービスの選定から導入までを進めたか教えてください。

山崎:検討を開始した当初は3つのサービスを候補に挙げ、机上で翻訳精度の評価比較を行いました。その上で2017年の3月から『Mirai Translator®』をトライアル利用し、実用性の確認を行いました。

その後、2019年4月より正式に利用開始し、当部が運営する社員向けの新技術関連の情報共有サイトでも周知してきました。現在は三菱商事の社員に加え、海外場所/現地法人・国内外事業投資先(わが社出資比率100%に限る)の社員のうち、希望者が利用しています。

ー 社員の方々からの評判はいかがでしたか?

山崎:英語圏に駐在している現地スタッフから「『Mirai Translator®』は、翻訳が自然でいいね」と。また、使い方が直感的でわかりやすく翻訳速度も速いため、使い勝手の良さを評価する声も多くあがりました。

河原:もう一ついいと思ったのは、セキュリティの高さですね。機密文書を翻訳にかける可能性もありますから、訳せればどんなものでもいいというわけにはいきません。その中で、貴社が「翻訳処理はすべて国内サーバで完結」「データは翻訳終了後に自動削除」と確約してくれたのはありがたかったですね。候補に挙げたサービスの中では唯一の存在でした。他社からは「対応できません」「自分で消してください」という回答が返ってきましたので、『Mirai Translator®』で行ってみようということになりました。


『Mirai Translator®』の翻訳データフロー。翻訳終了後には、データを自動削除。ID・パスワード、ユーザ辞書、翻訳メモリ、プロファイル情報、APIキーは暗号化のうえ、すべての翻訳処理を日本国内サーバで自社運用し、堅牢なセキュリティを実現している

導入後の感想と今後の展望:2,000名のグループ社員が月間1,000万語規模で使い続ける理由

ー 正式利用を開始されて、利用状況はいかがですか?

日本語⇔英語、日本語⇔中国語(簡体字、繁体字)の翻訳量は合わせて月に1,000万語程度です。第三言語として、イタリア語、インドネシア語、スペイン語、タイ語、ドイツ語、フランス語、ベトナム語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語の10カ国語があり、こちらは日本語への翻訳が中心。現在の利用者数は約2,000名に上っています。

ー 導入効果をどのようなところに見出されていますか?

河原:当社の場合、本番導入後 約3年近く使われ続けていることが、まず評価されている証拠です。ITサービス部では、人気のないサービスはどんどん変えたり、廃止したりしています。そういう新陳代謝の激しい中で、『Mirai Translator®』は社員に選ばれているツールだといえます。

山崎:英語以外の言語では特に業務効率向上効果が高いと考えています。ドキュメントを理解するスピードが上がりました。

河原:翻訳に割く時間を短縮して余白時間を作り、より付加価値の高い時間にしているということだと思います。特に第三言語の翻訳業務というのは特定の社員に回りがちなので、彼らにとってもメリットが高いと思います。

また、これを答え合わせに使っているという社員もいます。英文は自分で書くけれども、元の日本語を投入して機械翻訳ならどう訳すのかチェックしてみる、自分で書いた英文を日本語に戻してみるといった使い方ですね。

ITツールやサービスに関するご意見箱があるんですが、そこには『Mirai Translator®』に関していろいろ無理難題が寄せられます(笑)。「20文書以上を同時に投入したい」「PDFでエラーが起きても自動変換してそのまま翻訳を続けてほしい」など、こうした要望が出るのも日常的に利用されているからこそでしょう。

ー 今後の展望をお聞かせください。

河原:要約に挑戦したいですね。たとえば、マネジメント層は多忙ですから、訳出された全文ではなくあらかじめ要約した上で提供する。また、オンライン会議での英語コミュニケーションをテキストに文字起こしして、要約して、それを議事録に掲載、といった流れなども実現できるといいなと思っています。どのように具体化できるか、これから考えていこうと思っています。

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