一般社団法人 情報通信技術委員会 AI自動翻訳の導入事例 速度、UI/UX・翻訳品質、無制限定額を評価して乗り換え。翻訳量10倍で会員サービスの質が向上
2020年10月に設立35周年を迎えた標準化開発機関(SDO) 一般社団法人 情報通信技術委員会。同団体は、米国のATISの次に設立された歴史あるSDOです。情報通信の基盤となるネットワークの相互接続、品質や安全の確保のための標準化に始まり、近年は上位のサービスアプリケーションに関する標準化がすすめられています。
同団体では、2020年4月より『Mirai Translator®』を他社のAI翻訳ツールから切り替えて導入いただいています。本記事では、乗り換えの背景とその導入効果を、一般社団法人 情報通信技術委員会 企画戦略部長(企画担当)金子 麻衣氏に伺いました。
一般社団法人 情報通信技術委員会
総務省により認定された民間の非営利団体で、国内の通信事業者や主要な情報通信機器メーカーなど94社が会員企業として所属。国内の情報通信ネットワークに関する標準化を扱うSDO(標準化開発機関)として、情報通信分野における標準化に貢献するとともに、その普及にも注力しています。一方で、海外で制定された標準を日本に紹介して広める活動も実施。特に、スイスを拠点とするITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector。世界規模で電気通信を標準化することを目的として勧告を作成する国連機関)とは密接に連携しています。
企画戦略部長(企画担当) 金子 麻衣(かねこ・まい)様
課題:国際機関と連携する中、行き交う膨大な技術文書の翻訳
ー はじめに、金子さんが現在取り組まれている業務を教えてください。
金子:企画担当として、TTCの事業計画・中期標準化戦略の策定や、ホームページでの情報発信など各種広報業務、セミナーの企画・運営など幅広い業務を担っています。最近では、国際標準が企業の事業化やビジネスに役立っている事例を収集してホームページに掲載する活動や、会員企業がイノベーションを推進するヒントになるようなセミナーなども提供しています。
ー 貴団体における翻訳ニーズとそこでの課題はどのようなものだったのでしょうか?
金子:翻訳ニーズは双方向あります。国内で作成された標準技術を国際舞台で発表するための和文英訳と、海外で作成された国際標準を日本に紹介する際の英文和訳です。翻訳に関わる10数名のスタッフは英語が得意なのですが、国際機関から発表される技術文書の分量が膨大で、それも1本100~200ページなどというのはザラでした。リソース上の制限から全訳は非常に重要なドキュメントにとどめ、それ以外は表紙と概要のみ和訳という形で公開していました。全訳できるのは全文書の1/10ぐらいでした。
しかし、やはり英語だと作成された国際標準の国内認知が進まないんですよね。そのため、日本だけが独自路線を進む“ガラパゴス化”の懸念がありました。また、本当に活用したい会員企業に自助努力で和訳していただくことになり、当団体が提供するサービスの質という意味でも課題がありました。
選択の理由:訳出スピード、UI/UX、訳文品質を評価して既存ツールからリプレース
ー ひとまずAI翻訳ツールを導入されたと伺いました。
金子:はい、年間の翻訳ボリュームを大体40万語と見積もり、その範囲で予算に合うものを導入しました。機能的には、別に検討したもう一つのツールの方がよかったのですが。ふたを開けてみると、予想以上に翻訳需要があって10カ月で文字数枠の上限に達しました。当団体は東南アジアとの結びつきも深く、日⇔英以外の翻訳ニーズもあることも判明しました。
それで、契約をアップグレードするかどうかということになったのですが、参与(前田洋一(まえだ・よういち)氏、前 専務理事)から「Mirai Translator®は優秀らしいよ」との情報が入って、参与・私・翻訳に関わるスタッフで1カ月トライアル利用してみることにしました。その結果、全員が「Mirai Translator®の方がいい」という結論を出したんです。
ー どのような点がよかったのでしょうか?
金子:まずは訳出スピード。以前のツールはWord1枚の文書も数十枚の文書も同じように時間がかかってすぐに終わらず、その間に他の仕事をして戻ってくる必要がありました。しかし、Mirai Translator®は大量文書でなければ、そんなに待たなくても訳出可能で、PC上で同時に他の仕事もできます。スタッフは皆、訳すスピードだけは速いフリーの機械翻訳ツールに慣れているので、時間がかかるのには耐えられないんですね。速さは当団体にとって非常に重要で、速く訳せればそれだけ速く情報共有したり、内容を理解して意思決定を行えるため、迅速に次のアクションへ進めます。
UI/UXという点でも違いましたね。既存のツールは翻訳をかける前にいくつも項目を設定しなければならず、それも間違いやすいので、利用に先だって説明会が必要でした。しかし、Mirai Translator®は設定項目も少なく、視認性に優れているため、特に何も説明しなくても皆サクサク使いこなしていました。
また、参与は「こちらの訳文の方がしっくり来る」と。これは、情報通信業界の用語を適切に採用していると同時に、通訳者が話すような自然な訳文を実現しているということだと思います。
文字数制限がないというので、気軽にトライアル・アンド・エラーできるのも魅力でした。想像以上のペースで利用されたため、以前のツールは利用率6割を超えてから「大量文書を翻訳するときは一声かけてください」と暗に歯止めをかけざるを得ませんでした。スタッフの間でも「訳していいのかな」と遠慮が生じるようになったと思います。業務効率向上のために導入するのに、制限があるために利用をセーブするのでは本末転倒です。Mirai Translator®なら、業務に必要なすべてのドキュメントを気兼ねなく翻訳にかけられる環境が整うと考えました。
さらに、海外出張が頻繁に発生する当団体にとっては、どこからでも利用できるロケーションフリー機能を提供いただけたこともありがたかったです。
導入後の感想:会員企業に提供できる技術文書の翻訳量は10倍に、作業負荷は1/5に
ー 2020年4月から正式利用を開始され、業務ではどのように活用されているのでしょうか。
金子:言語方向は現在、日⇔英、日⇔中を利用しています。たとえば私の場合、翻訳が主な業務というわけではないのですが、重要な国際会議の情報は共有した方がいいと思い、毎年ジュネーブで開催されている「AI for Good Global Summit」の情報をリサーチして、翻訳だけではなくかみ砕いた情報をホームページやセミナー、当団体が発行しているレポート冊子などに掲載しました。訳出スピードが速いMirai Translator®がなければ、そもそもここまでの資料化を実現することはできませんでした。
毎年ジュネーブで開催されている「AI for Good Global Summit」にも利用
多くのメンバーは、国際機関に提出する寄書や講演原稿の英訳、出てきた技術文書をまるごとササッと頭に入れたいというときに利用しているようです。英語に堪能であっても、やはり母語での理解の方が速いですから。また、技術文書の翻訳のみならず、中国や東南アジアの関係者とのメールのやりとりでも利用していますね。英語が公用語ではない国同士だと母語の方が楽なようです。
多彩なフォーマットの文書の翻訳にも活用
ー Mirai Translator®の導入効果があれば教えてください。
金子:できなかったことができるようになったことを実感しています。「AI for Good Global Summit」の例でもわかるとおり、以前に比べると翻訳できる量は10倍ぐらいになりました。それも訳したい文書を制限なく訳せています。それだけ会員企業に対して提供できる情報のスピード、そして量と質が大きく向上したと思います。
それでいて作業負荷は大幅に軽減しました。個人差があるとは思いますが、私自身の負担は以前に比べて1/5ぐらいになりましたし、スタッフからも同様に1/5程度になったという声が寄せられています。Mirai Translator®だと修正作業も少ないんですよね。寄書の英訳、技術文書の和訳は会員企業の方々にレビューをお願いするケースがあって、これまではシビアな修正指示が返ってきたものでした。それが「あまり直すところはないかも」とおっしゃるようになって、プロセスがスムーズに進むようになりました。
また、今後はユーザー辞書を活用していきたいですね。今でも十分使えてはいるんですが、今後はもう少しユーザー辞書を使いこんでいければなと思っています。
ー 最後に、Mirai Translator®導入をご検討されている方へコメントをお願いします。
金子:価格以上に利用価値のあるサービスです。文字数制限がないので心おきなく利用でき、また使うほどにさまざまな活用のアイディアが見つかって業務の幅も広がります。外国語を日常的に利用する組織こそ、さらなるコミュニケーション促進に役立てられると思います。